すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「君はいつもそうやって、姉妹同然のセリスに怒鳴っていたのか?」
「怒鳴ってなんか……」
「実際にこの目で見るまで信じられなかったよ。君がセリスをいじめているなんて」
「いじめてなんか……」
「もういい。僕は嘘をつく人間が大嫌いなんだ。君もよく知っているだろう? それなのに、僕をずっと騙していたんだな」
「騙してなんか……」

 アベリオは私に反論の隙を与えてくれない。
 彼は完全にセリスの言い分を信じ込んでいる。

 いつも私を気遣ってくれて、優しい笑顔を向けてくれていた彼は幻だったの?

「もういいわ、アベリオ。これ以上レイラを責めないであげて」
「セリス……君はどれだけ優しい子なんだ。これ以上我慢しなくていいんだよ」
「私は大丈夫。あなたが信じてくれさえいれば」

 セリスはアベリオの腕にそっと顔を寄せる。
 あまりにも自然で、あまりにも親密な距離だ。

 私はいったい、何を見せられているのだろう。
 私の婚約者が、私の従妹を抱き寄せている。
 その手つきも、視線も全部、私が知っている優しさだ。

 胸の奥が焼けるように苦しい。
 呼吸の仕方さえ忘れてしまいそうだ。

< 12 / 231 >

この作品をシェア

pagetop