すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「騎士になりたかったのね」
「そのために訓練をしていた。生まれつき体が弱く、よく病気をしていた。寝込むことが多いと、無性に動きたくなるんだよ。いつか騎士になろうと思っていた。毒に侵されるまでは」
「けれど、あなたの心はとても穏やかだわ」
「スヴェンに救われたからね」
「でも、まだ諦めきれていないということね」
「そうだろうな。君がこの絵を描けるということは、俺はまだ未練があるのだろう」
 
 エリオスはふっと、かすかに笑みを浮かべた。


「まあ、これは……!」

 エレノア様の声が庭先から聞こえた。
 視線を向けると、バルコニーに出ていたのは彼女だけでなく、侯爵やカレン、そしてデイルとリックも眠そうな顔で姿を現していた。

「あっ! 兄ちゃん見て。スヴェンの絵が見える!」

 リックが歓声を上げると、デイルも目を輝かせて感嘆した。


「騎士だ。すごくかっこいい」
「ねえ、スヴェンが帰ってきたの?」
「そんなわけないだろう。あれは……」

 デイルの言葉を、侯爵が笑みを浮かべて続けた。

「レイラが描いた絵だよ」
「素敵ね」

 カレンが侯爵のとなりでやわらかく微笑む。


 エレノア様はわずかに肩を震わせながら、絵を見上げて目を潤ませていた。

「なんて、美しいのかしら」

 彼女の感嘆の声が静かな夜に響き、頬を伝う涙が月明かりにきらめく。
 その様子を見て、私は胸が締めつけられ、同時に熱くなるのを感じた。

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