すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「アベリオ、伯父様が呼んでいるわ。少し待っていてくれる?」
「ああ、いいよ」
「ごめんなさいね」

 セリスはわざわざ僕の頬にキスをしてから、侍女に連れられ部屋を出ていった。
 僕はそっとハンカチで頬を拭う。


 静まり返った部屋で、なんとなく周囲を見まわす。
 頻繁にセリスの部屋を訪れているが、彼女が絵を描いているところを見たことはない。

 レイラの部屋には絵具や画材が散らばり、壁や床にも色が付着していた。
 しかし、セリスの部屋はごく普通の令嬢の部屋だ。
 高価な調度品、上質な絨毯、白を基調とした空間。

 もし絵具をこぼせば目立つだろう。


 彼女は別の部屋を仕事場として使っているらしいが、僕は見たことがない。
 散らかっていて見せられないと言っている。

 まあ、どこで絵を描こうと、僕にはどうでもいいことだ。


 暇を持て余していたので、ソファから立ち上がり、部屋の中を歩きまわった。
 クローゼットの部屋を開けると、ずらりと並ぶ数多くのドレスが目に入る。
 連日パーティに出席するために揃えたのだろう。
 前回来たときよりも、明らかにドレスの数は増えている。

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