すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「次のパーティのドレスを新調するわ。衣装屋を呼んでちょうだい。アベリオ、あなたも一緒に見立ててくれるでしょ?」

 部屋で使用人たちに命じていたら、そばにいたアベリオは意外なほど冷めた返答をしてきた。

「君は少し羽目を外しすぎだ。結婚前だという自覚を持つべきだよ」
「何を言ってるの? 私はパーティの準備をしているだけよ」
「昨日もその前も、食事会だお茶会だと出歩いてばかりじゃないか」
「それは仕事よ! 絵を売るために人脈を広げているの!」
「その絵を君はいつ描いているんだ? もうひと月以上、何もしていないだろう」


 なぜアベリオにそんなことを言われなければならないの?
 何もしていないくせに偉そうだわ。


「あなたにそんなこと言われたくないわ。なんて酷いことを言うの?」
「いや、別に描かなくてもいい。君は僕の妻になるんだから。侯爵夫人としての務めを果たせばいい。ただ、こうも遊び歩かれるとね」
「遊んでないって言ってるでしょ!」
「ああ、そうだね」

 その言い方が気に障って、胸の奥がむかむかした。
 最近のアベリオったら、ほんと鬱陶しい。
 私の行動をいちいち制限してくるなんて、まるで監視されてるみたいじゃないの。

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