すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 オルナード国王室主催のパーティ前日の夜のこと。
 私は緊張でなかなか寝つけなくて、そっと寝室を抜け出した。

 庭園には月が浮かび、白い光が噴水の縁を淡く照らしている。
 夜風が髪を揺らし、どこか遠くで虫の声がした。
 私は石造りのベンチに腰を下ろし、ため息をつく。


 明日は、セリスやアベリオにも会うことになるだろう。
 それを思うだけで胸の奥がずっしり重くなる。

 けれど、王子直々の招待を断ることはできない。
 唯一の救いは、エリオスも同行してくれるということだった。

 そんなことを思っていたときだった。

「レイラ、そこにいるのか?」

 低く穏やかな声が近くからした。
 私ははっとして立ち上がり、声のした方へ向き直った。

 エリオスが杖を手に、ゆっくりとこちらへ歩いてくるのが見えた。
 私が慌てて彼のそばまで駆け寄った。

「サイラスさんは一緒じゃないの?」
「夜の時間はひとりで過ごしたいんだ」
「危ないわ」
「平気さ。君がいるから」

 思わず笑みがこぼれる。
 彼の言葉はまっすぐで、いつも私の心に安堵感をもたらしてくれる。

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