すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 やがて会場を出て、休憩を取ることになった。
 ゲストルームへ向かうと、数人の貴族が穏やかに談笑していた。
 エリオスがソファに腰を下ろす。

「何か飲み物をもらってくるわ」
「すまない」
「いいのよ。すぐ戻るから」


 私は軽食の並ぶテーブルへ向かった。
 そして銀のトレイに並ぶグラスに手を伸ばしたとき、別の手が同じグラスに触れた。

「あ、ごめんなさい」
「いや、いいんだ」

 その声を聞いた瞬間どきりとした。
 視線を上げると、そこにアベリオが立っていた。

 驚きで言葉を失う。
 まさか、この場所で彼と再び顔を合わせるなんて。


「久しぶりだね、レイラ」
「……ええ、そうね」

 無視するのも不自然だから、できるだけ感情を抑えて淡々と返す。

「今はノルディーン公爵のところにいるんだって?」
「どうして、それを?」
「君の父に聞いたんだ。なぜ公爵のところにいるんだ? 君はたしか男爵のところへ嫁いだはずだ」

 それを話さなきゃいけないのだろうか。
 つらく悲しいあの夜のことを。

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