すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「うふふ。声をかける前に気づいてくださるなんて。公爵様は、もしかして私のことを意識してくださっているのかしら?」

 その甘ったるい声には聞き覚えがあった。
 レイラを陥れ、彼女を苦しめたあの女だ。


「君は、レイラの従妹か」
「セリスと呼んでくださって構いませんのよ。エリオス様」

 不快感が胸の奥に広がる。
 レイラから聞いていたこともあるが、それ以上に、この女の心から溢れ出す邪念のようなものが、強烈にぶつかってくる。
 近くにいるだけで、頭痛がするほどだ。

「すまないが、用事があるので俺はこれで」

 席を立とうとした瞬間、腕を掴まれた。
 というよりも、絡め取られたのだ。


「ご令嬢、一体何を……」
「セリスとお呼びくださいませ、公爵様」
「ではセリス嬢、俺から離れてもらえないだろうか?」
「まあ、公爵様は目が見えないのでしょう? 誰かの助けが必要だわ」
「結構だ。俺は人の気配を感じとることができる。ひとりで歩けるので」

 そう言って軽く彼女の腕を振り払った。
 失礼かと思ったが、こうでもしないと彼女は離れてくれないだろう。

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