すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「セリス嬢」
「はい!」

 明るく返事をするセリスに、俺は低く、しかし強い口調で言い放った。

「これ以上レイラを貶める言葉を吐くな。次は俺が許さない」
「えっ……で、でも……レイラは」
「黙れ。君の言葉など聞きたくもない」
「公爵様は騙されているんです。レイラは……」
「レイラのことなら、誰よりも俺が理解している」

 セリスが息を呑む気配がした。
 だが、そのまま続ける。

「俺にはレイラの心が見える。今にも消えてしまいそうなほど儚く脆い。だがその中にある信念は、誰よりも強い。努力を惜しまず、まっすぐに生きようとしている。その心の光は、俺にしか見えないだろう」

 彼女が何か反論する前に、俺はすかさず警告した。


「二度と俺に近づくな。君の声も聞きたくない」

 するとセリスの怒号が飛んできた。

「なんなのよ! こっちは下手(したて)に出て、可愛くしてあげてたのに何様のつもり?」

 セリスが手を振り上げる気配を感じた瞬間、俺はその動きを読みとり、すばやくその手を払った。

「え……なぜ」
「なぜ見えないのに、か? 何度も言っただろう。俺は“心の目”で見えている。君の気配も、君の内側に渦巻くどす黒い感情もな」

 彼女が怯む気配が伝わってくる。
 だが、俺はさらに冷ややかに告げた。

「金輪際、俺に近づくな。そして、レイラにもだ」


 しばし沈黙が流れたあと、わずかに離れたところからセリスの怒号が聞こえた。

「何よ! 見えないくせに偉そうにするんじゃないわよ!」

 彼女の気配が離れていくのを感じて、ようやく俺は安堵のため息を洩らした。

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