すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 よろける足取りで、パーティ会場へ続く廊下を歩く。
 わざと転びそうになりながら、周囲の視線を引きつけていった。

「まあ、スレイド令嬢……そのお姿は?」
「ドレスが破れているわ!」
「ワインのシミまで……一体、何があったの?」

 ざわめきが広がっていく。
 私は俯き、涙ぐみながら震え声を洩らした。

「少し……従姉とトラブルがありまして……」
「従姉って、レイラのこと?」
「ええ……ノルディーン公爵と、どうやら愛人関係にあるみたいです。でも、レイラはつい最近も婚約者を裏切ったでしょう? だから心配になって、公爵様にそのことをお伝えしたんです。そしたら、彼が激怒して……」

 頬を伝う涙を指先で拭うと、女たちのざわめきが上がった。

「まあ、なんてこと!」
「やっぱりレイラは悪女だったのね」
「公爵様も、きっと騙されているのよ」

 ふふっ、女の噂が広まるのは早いのよ。
 これでレイラの信用は地に落ちる。
 ついでに公爵も、悪女に騙された哀れな男として噂になるはず。

 私を見下した報いを受けるといいわ。

< 196 / 231 >

この作品をシェア

pagetop