すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 スヴェンは静かに振り返り、まっすぐこちらを見つめた。
 いろいろと訊きたいことはある。
 しかし、声を発することができなかった。
 まるで問いかけることを許されていないようだった。

 足下に亀裂が走った。
 音もなく、それは瞬く間に地面を這うように広がっていく。
 俺はその裂け目の向こうに、スヴェンを見た。
 思わず一歩踏み出そうとした瞬間、彼が手を上げて制した。

 彼はゆっくりと俺の背後を指差す。
 振り返ると、眩い光が差し込んでいた。
 この迷い込んだ森の出口のようにも思える。
 スヴェンも一緒に行こうと声をかけようとしたら、彼の姿は淡く揺らめき、ゆっくりと消えていった。

 親子の様子を描いた絵だけが、月明かりに浮かんでいた。

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