すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

28、君の顔が見える(エリオス)

 スヴェンの夢を見た。

 彼の姿を、俺はこれまで一度も見たことがない。
 それなのに、なぜかスヴェンであるとはっきりわかった。
 夢の中の彼はまるで生きているかのように鮮明だった。

 風に揺れる白銀の髪は月光を受けて輝き、眩しいほど美しい。
 その碧い瞳は静かな湖面のように澄みわたり、その奥には深い哀愁が宿っている。

 声をかけようとしたが、なぜか言葉にならなかった。
 スヴェンは微笑み、こっちへ来いというような素振りでゆっくり歩く。
 俺は静かに彼の背中を追いかけた。


 いつの間にか夜の森の中にいた。
 月明かりに照らされた湖が広がり、まるでレイラと初めて出会ったあの夜のようだった。

 スヴェンは立ち止まり、空に向かって手を掲げる。
 彼の手から一筋の光がすっと伸び、それがいくつも重なって絡み合い、ひとつの形を結んでいく。

 やがて浮かび上がったのは、親子の絵だった。
 穏やかに微笑むふたりのあいだで、子供が嬉しそうに手を繋いでいる。
 子供は満面の笑みだ。

 幸福の象徴のような光景なのに、なぜか胸が締めつけられる。

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