すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

30、もしも――(メイア)

 私はどこで間違えたのだろうか。
 もっと早く、レイラを連れてこの家を出るべきだったのかもしれない。
 けれど、レイラの絵の才能を伸ばすには、スレイド家に留まるしかなかった。

 あの子は彼と同じ、光を描く才能を持つ天才だったから。
 私にはあの子をその道へ導く責任があると思っていた。
 だから、どれほど夫に蔑まれ、罵られ、殴られようと、耐えて耐えて過ごしてきた。
 夫がレイラに手を上げそうになれば、私が代わりに殴られた。


 彼はいつも言っていた。私を殴る権利があると。
 理由は、私が結婚前にすでにレイラを身籠っていたから。
 けれど、彼はそれを知った上で私を娶ったのだ。
 それなのに、結婚後は「裏切り女」と罵り、私を蔑み続けた。

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