すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 私は廊下に座り込み、右手を何度も確かめる。
 赤く膨れ上がった手のひらは、もはや自分のものとは思えない化け物のようだ。
 血が滴り落ちて床を濡らしていく。


「お願い……お願い……これは夢だって、誰か言って……もう、私には希望なんて残されていないの……私にとってこの手がすべてなのに……」

 涙が頬を伝い、床に落ちる。
 私は必死に祈った。


 他には何もいらない。どうか、どうか私の右手だけは――


 翌朝、私の必死の祈りも虚しく、医師の診断は残酷なものだった。

「ひどい火傷です。これでは二度と筆を握ることはできない。それどころか、日常生活でも支障が出るでしょう」

 目の前が真っ白になり、息が止まりそうになった。
 私の横で父が医師に問いかける。

「どうにかならないのか? レイラにはまだ仕事の依頼が山ほどあるんだ。絵が描けなければ仕事にならない」

 しかし、医師の返答は冷たいものだった。

「無理でしょう。しかもこれは、ただの火傷ではありません。特殊な薬品によるもので、通常の治療では回復できません」
「どういうことだ?」
「こちらがお嬢様の机の上に置かれていた薬品です。おそらく手にかかったのでしょう」

 医師が手に持つ瓶は、見たこともないものだった。

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