すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 私が嫁ぐ朝、空は皮肉なほど澄みわたり、まるで祝福するかのように太陽の光が降り注いでいた。

「レイラ、元気でね。手紙を書くわ」

 セリスは満面の笑みを浮かべ、私の前に現れた。
 あまりにも白々しくて、吐き気がするほどだ。
 本当なら言い返したかった。けれど、となりでアベリオが冷たい視線を向けてくる。
 そして何より、私自身があまりにも疲れ果てていて、もはや口を開く気力さえ失っていた。


 この場で何を言ったところで、誰も信じてくれない。
 父も、叔母も、アベリオも、ここにはセリスの味方しかいないのだから。

 私は無言のまま小さく会釈をすると、バッグ一つを抱えて馬車に乗り込んだ。
 その背後で、叔母が父へ不満を漏らす声がした。

「せっかく見送りに出てあげたのに、愛想もないのね」
「ああ。死んだ母親にそっくりで生意気な娘だ。これでもう顔を見なくて済むと思うと、せいせいするよ」


 胸が痛んだ。
 それでも私は、父を憎みきることができない。たったひとりの親だったから。
 けれど心は疲弊しきっていて、涙はとうに枯れてしまった。

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