すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 やがて小さな湖に辿り着き、思わず駆け寄った。
 湖面に手を浸すと、水の冷たさが体の奥まで沁みわたる。
 右手は動かず、うまく水がすくえない。
 それでも、どうにか口に含むと、潤いとともに生きている実感がした。


 思わず涙があふれ、嗚咽がこぼれる。
 叫びたいほどの絶望の中で、わずかな安堵が、胸を押し広げる。

 でも、これからどうすればいい?
 唯一、心の拠り所だった絵を描くことも、この右手ではもう不可能だ。
 失ったものの大きさに、絶望が波のように押し寄せる。


「お母様、私はどうすればいいの?」

 そっと口にした言葉は、さらっと吹き抜ける風にかき消される。

 ぼんやりと湖面を眺めていると、あたりが次第に明るくなった。
 重く垂れ込めていた雲の隙間から月の光が湖を照らしたのだ。

 あたりがやわらかい夜の光に満ちて幻想的に映る。

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