すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「これはすごいな。立派な絵だ」

 急に背後から声をかけられ、驚いて振り返る。
 するとそこには、杖をついた身なりのいい若い男性が立っていた。


 月明かりに照らされた黒髪はわずかに黄金に輝いている。
 トパーズの宝石のような瞳を持つ美しい男性だ。
 すらりとした長身に黒のロングコート。右胸には金の紋章があり、上級貴族であることがわかる。

 しかし、そんな人がなぜ夜の森を歩いているのだろう。
 背後には侍従らしき人物と数名の騎士がいる。
 きちんと護衛を伴っているところを見るに、道に迷ったわけではなさそうだ。

 恐怖と安堵の狭間で、私は思わず口を開いた。


「なぜ、私が絵を描いていると思ったのですか?」

 だって、これは私の想像でしかないから、実際には何も描かれていない。
 けれど、彼は穏やかな声音で答えた。


「それは、君の絵が俺には見えているからだよ」
「見える? それはいったいどういう……」

 話している途中でハッとした。
 彼と目線が合わない。
 確かに私のほうへ体を向けているのに、その目は私ではなく少し遠くへ向いている。

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