すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 思いがけない言葉に胸が震えた。
 まさか、想像で描いたものが他の人たちにも見えるなんて。
 彼が私に向かってやわらかい笑みを浮かべた。


「この絵から察するに、君は何か深い絶望に沈んでいたが、まだ希望を捨てきれないでいる。そういった気持ちが込められているのだろうか」

 思わず涙があふれた。
 もう涙なんて出ないと思っていたのに、優しさに触れるとどうしてこうも脆くなってしまうのだろう。


「俺の勘違いであればすまない」

 私が黙り込んだせいか、彼は少し困惑の表情になった。
 すると侍従がそっと彼に耳打ちした。

「泣いていらっしゃいます」
「何? それは申し訳ない。泣くほどとは」

 私は慌てて答える。


「いいえ。嬉しかったんです。絵を見てもらえたこともそうですし、何より私の気持ちを汲みとってもらえたことが嬉しくて……」

 私の絵を美しいと言ってくれて、その意味まで理解してくれて。
 まだ私は絵を描くことを諦めなくていいのだと言われた気がしたから。

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