すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 困った。家を追い出されたから手紙が私に届くことはない。
 こんな恥をさらすことになるのは本意ではないけれど、そんなことを言っていられない。
 正直に話すことにした。


「実は、私は家を追い出された身です。これから仕事と住む場所を探すので、落ち着いた頃に私から手紙を出す形でもよろしいでしょうか?」

 すると彼は驚いた顔をしたあと、すぐにやわらかい笑みを浮かべた。


「では、俺の家に来るといい」
「えっ⁉」
「客人の部屋は多くある。構わないだろう?」

 彼が侍従に問いかける。
 侍従は笑顔でうなずく。

「はい、もちろんです。空いているお部屋はお好きなところを選んでいただけます」
「そうと決まれば、すぐに出発しよう」

 いきなり何が起こっているのか混乱し、私は思わず声を上げた。


「そういうわけにはいきません。挨拶もなしで、いきなり殿方のお屋敷で暮らすなんて……」
「挨拶ならたった今、しただろう? 問題ない。それに、使用人が多くいる。ふたりきりで暮らすわけではないから心配は無用だ」

 彼はいたずらっぽく笑った。
 その表情がなんだか、胸の奥をぎゅっと締めつける。
 嬉しくて、ほんの少し恥ずかしい。

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