すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 しかし、まったく関係のない人のところで甘えるわけにもいかない。


「で、では……仕事が見つかるまでのあいだだけ」
「ああ、それでもいい。君は聖絵師(オーラリスト)ということで素性も知れているしな。公爵家に招く立派な理由になる」
「あの……神殿に、私のことを報告されますか?」
「いいや、それはしない。ただ、理由付けにしておくだけだ」

 ああ、この人は、私に配慮してくれたんだわ。

 由緒ある公爵家に見ず知らずの人間を住まわせるとなると、社交界での評判にも影響する。
 それを私が気にして躊躇すると思ったのだろう。
 だから、わざと聖絵師(オーラリスト)を理由にしたのだ。

 聡明で、心優しいお方だわ。


「では、お言葉に甘えて少しだけお世話になります」

 そう言うと、彼は驚くほど素直な笑顔を向けてくれた。

 騎士たちに案内されて、近くに停めてある馬車に乗り込む。
 公爵家に向かう道中、私はそっと彼に問いかけた。

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