すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 食卓には香ばしく焼かれたステーキ、湯気を立てるポタージュスープ、彩りのあるサラダにハーブの香りがするパンなどの料理が並んでいた。
 驚いたのは、大皿のステーキがひと口大に切り分けられ、各皿にはフォークだけが添えられていることだ。

 ちらりとエリオスを見ると、彼もまたフォークだけで静かにゆっくりと食事を口に運んでいる。
 彼は目の前の料理が見えないから、ナイフを使わないのだと気づく。


 私にも配慮してくださったんだわ。
 嬉しくて、笑みがこぼれる。

 ステーキは香ばしく、噛めば肉汁が広がり、ポタージュスープは優しい甘さが体に沁みる。
 それでも、ここしばらくまともに食事をとっていなかったせいか、すぐにお腹がいっぱいになってしまった。


「ごめんなさい……本当に美味しいのだけど、ほとんど食べられなくて」
「無理をすることはない。少しずつ食べられるようになればいい」

 彼の声は責めるどころか、むしろ労わるように優しい。
 私はほっと安堵のため息を洩らし「ありがとう」と小さく答えた。

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