すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「では、ハルトマン侯爵にお手紙を出されるというのはいかがでしょう?」
「それも考えたが、もしレイラが自身の出生を隠したいということなら、彼女の居場所が特定できるようなことはしたくない」

 あくまで憶測の話だが、もしレイラが本当にハルトマン一族の令嬢だとして、それを隠しているなら家族には居場所を知られたくないだろう。


「それに、レイラが本当にスヴェンと似た容姿なら、それだけでは済まなくなる」
「私もそのことが気がかりでございます」
「とりあえず、今はこちらから詮索するのはやめよう。彼女の心が落ち着くまで、少し待とうと思う」
「承知いたしました。あのようなお怪我をされていますし、まずは療養が必要ですね」
「ああ。だが、一応ハルトマン家のことは心に留めておこう」
「では、私もそのようにいたします」

 サイラスは丁寧にそう言って、執務室を出ていった。
 静寂が訪れた室内で、俺は窓際の光のあるほうへ体を向ける。

 窓の外の景色は見えないが、今日は晴れているのか空気が澄んでいるように思える。
 こんな日は、スヴェンとの思い出に浸るのも悪くない。


 レイラ、君はスヴェンと血縁関係にあるのだろうか。
 もしそうならば、これは冗談ではなく、本当に天の導きなのかもしれないな。

 そうだろう? スヴェン。

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