すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 レイラとふたりでベンチに座り、おもむろに彼女に切り出す。


「泣いていると聞いたのだが、何かあったのか?」
「特に、何もないわ……皆さん、すごくよくしてくださるから」
「では、なぜ?」

 レイラは少し黙ってから、返答した。

「希望を持って、訓練しているのだけど……この手が毒に侵されてしまったときのことを、今でも夢に見るの……夢の中で毒は私の全身に広がって、体中が異形の姿になってしまうの……怖くて、怖くて……何度も目が覚めてしまう」

 何と答えたらいいか、少し悩んだ。
 どんな慰めの言葉も、彼女の心に響くとは思えなかったから。


「レイラ……」
「ごめんなさい、こんなことを言って。せっかくあなたがくれた希望を無駄にはしないわ。もう悩まないようにしなきゃ」
「無理をする必要はない。泣きたいときは泣けばいい。少なくとも、俺の前では本音をぶつけても構わない」
「……エリオス」
「すまない。俺には君の表情を読みとることはできない。しかし、君がとても苦しんで、悲しんでいることは、なんとなく伝わってくる」
「ありがとう。あなたには本当によくしてもらっているわ。感謝してもしきれないほどよ」

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