すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 その日、俺はまずレイラに別室で待っていてもらった。
 いきなり顔を合わせれば、互いに戸惑うのは目に見えている。
 だから先に、ハルトマン侯爵を貴賓室に通し、事情を説明することにした。


「なるほど。エリオス殿の話では、レイラという令嬢は弟と同じ絵を描けるのだな」
「ええ。初めてその絵を目にしたときは、まるでスヴェンが蘇ったかのように感じました。さらに、うちの侍従が言うには、容姿まで瓜二つだと。これは何かの縁だと思わざるを得ませんでした」

 ハルトマン侯爵は黙り込んだ。
 困惑しているのだろうか。しばらく沈黙したあと、彼は落ち着いた声で答えた。


「実はね、弟は死の間際に、私にだけ打ち明けたことがある。かつて愛していた女性がいたのだと。私も初めて聞かされて驚いたよ。弟は常に旅ばかりしていて、たまに帰ってきても自分のことはほとんど語らなかった。息子たちとはよく遊んでくれていたが、気がつくとまたふらりと旅に出てしまう。そんな男だったからね」

 これまで想像の域だったことがだんだん確信に近づきつつある。
 俺はもっとも知りたい核心を問いかけた。

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