すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「レイラと呼んでもいいだろうか?」
「はい」
「君は奇跡の絵を描くことができるとエリオス殿に聞いた。実は私の弟もそういった絵を描いていたんだ。もし君がそのことについてもっと知りたいと思うなら、ぜひうちへ招待したいと思っている」
「本当ですか?」
「ああ。弟は数年前に亡くなってしまったが、彼の遺品がある。君の手助けになるなら、ぜひいろいろ見せてあげたい」
「そんな大切なものを私が拝見してもよろしいのでしょうか?」
「誰の目にも触れないままより、誰かの役に立てたほうが弟も喜ぶだろう。彼は人助けのためにいろんな国を渡り歩いていたからね」
「そうですか。では、よろしくお願いします」

 レイラの声がどことなく穏やかになった。
 少し安堵したような口調だ。


 それからふたりはお茶を飲みながら他愛無い話をしていた。
 侯爵はカルベラ国の話や息子たちの話をして、レイラはよく笑っていた。
 ただ、レイラから自身の家族や生い立ちについての話が出ることはなかった。

「では、再びお会いできるのを楽しみにしています」

 談笑のあと、レイラはそう言って静かに退室した。
 ふたりきりになった瞬間、侯爵は大きなため息をついた。

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