すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「本当だ。俺は聖絵師(オーラリスト)の絵で病がよくなったんだ。あれはすごいぞ」
「最近よく話題になっている絵のことだろ?」

 その言葉に、どくんと鼓動が跳ねた。
 声の主たちは相当酔っているのだろう。誰もが顔を赤らめている。
 
「絵で病気が治るなら医者は必要ないな」

 誰かが笑いながらそう言った。
 私は複雑な思いを抱く。

 治すというよりも、癒やすというほうが正しい。
 私たちの絵は、そういうものだ。痛みを和らげ、心を軽くし、病と向き合う力を与える。
 だから、病を完全に治すことはできない。

「ほら、最近有名な聖絵師(オーラリスト)……セリスって娘だったか」

 その名にどきりとした。
 セリスはもうこんなに名前が知られているんだわ。

「そうそう。俺は実際に見たことあるぞ。あれこそ本物だ。前に人気だった絵師は詐欺だったらしい」
「詐欺?」
「セリスの絵を横取りしていたらしいぞ」

 どくんどくんと鼓動が落ち着かない。
 この話の流れだと、私のことを指しているのだろう。

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