皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
「脚立はそのままでいい。今日もバラを頼んだよ。」

「はい、おじいちゃん。」

指示を受けて、私は庭の東側にあるバラ園へと足を運ぶ。

そこは、ヴィックのお母さまが、幼い頃から花を愛する彼のために整えられた特別な場所だった。

「あら、アンヌ。あなたが来たということは、もうそんな時間なのね。」

柔らかに微笑む彼女は、まるで私を時計代わりにしているかのように、毎日同じ時刻に姿を現す。

「少し待っていてちょうだいね。」

そう言って、優雅な仕草でバラを摘み取る姿は、息子を思う母そのものだった。

皇帝の母としてではなく、ただ一人の少年を慈しむ母親として──。

その光景を見るのが、私は好きだった。

「はい、これをお願いね。」

「かしこまりました。」

大切そうに差し出された一輪を両手で受け取り、胸の奥がじんわりと温かくなる。

この花に込められた想いごと、私はヴィックのもとへ届けるのだ。
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