皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
バラ園を出て、私は宮殿の台所の裏口からそっと入った。

「あら、アンヌ。今日も元気そうね。」

「こんにちは、カトリーヌさん。」

ここで女中をしている母のおかげで、女中たちは皆、私のことをよく知っている。

温かな笑顔に見送られ、私は足早に廊下を抜けた。

石造りの階段を昇っていくと、息が少しだけ弾む。

四階の一番奥──そこにヴィックのプライベートルームがある。

午後のひととき、彼は決まってこの部屋で過ごすのだ。

扉の前に立つと、胸が高鳴った。

皇帝陛下の私室なのに、私にとっては幼馴染の部屋でもある。

軽く扉を叩くと、中から聞き慣れた低い声が返る。

「はい。」

「失礼します。」

扉を開ければ、いつものように彼は入口近くに立っていた。

その姿に思わず胸が熱くなる。

「ヴィック……今日もバラの花を持ってきたよ。」

「ありがとう、アンヌ。」

微笑みと共に差し出された声は、幼い頃のまま。

けれど今や彼は、この国の皇帝なのだ。
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