皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
バラを手渡すと、ヴィックは自ら花瓶を手に取り、そっと水の中へ挿した。

母上が摘んだ花は、必ず自分の手で飾りたいのだろう。

その仕草は昔のままなのに、今の彼は皇帝──。胸がきゅっと締めつけられる。

けれど今日は、その部屋にもう一人。

皇帝付きの従者、イーヴが控えていた。

「アンヌ。今後はヴィクトル様のことを“皇帝陛下”とお呼びください。」

「はーい。」

わざと気の抜けた返事をすると、イーヴの眉がぴくりと動く。

「なんですか、その気のない返事は。」

年上の彼は、私とヴィックが幼馴染であることを知りながら、いつもこうして小言を言う。

堅物で少し意地悪──私は昔からちょっと苦手だった。

「いいんだ、イーヴ。」

ヴィックが笑みを浮かべて制した。

「しかし、陛下。“親しき仲にも礼儀あり”と申します。」
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