皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
なんでだろう。

今までのヴィックなら、きっとこんなふうに引きとめたりはしなかったのに。

「アンヌ、こっちへおいで。」

促されるままに連れて行かれたのは──幼い頃、三人でよく遊んだソファ。

隣に腰を下ろすと、胸の奥が懐かしさと緊張でざわめいた。

「どうだい? 庭師の仕事は。」

「うん……順調って言えば順調だけど。」

「だけど?」

優しい声に、思わず口をつぐむ。

「言って、アンヌ。」

促されて、ようやく小さな不安を口にした。

「……私、女だから背が低いでしょう? おじいちゃんが届く場所に、私だと届かないの。」

情けない弱音だと思った。

けれどヴィックは、何も咎めることなく、そっと私の手に自分の手を重ねる。

「じゃあ、もう少し高い脚立を用意しようか。」

見上げたその瞳は、皇帝の威厳よりも、ただ幼馴染を気遣う優しさで満ちていた。

胸がじんと熱くなり、涙がこぼれそうになるのを必死に堪えた。
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