皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
──でも、愛妾って?

頭の中で何度もその言葉がこだましながら、私は足元をふらつかせるようにして庭へ戻ってきた。

「おっ、戻ってきたな。」

声に顔を上げると、ティドが木陰に腰を下ろしていた。

いつの間に来ていたのだろう。

「どうだった? ……皇帝陛下は。」

その問いかけに、堪えていた涙が一気に溢れた。

「えっ? どうしたんだよ。」

「ねえ、ティド……“愛妾”って何?」

「愛妾……?」

戸惑うティドに、私は必死に縋る。

「教えてよ。ねえ、お願い。」

彼は困ったように視線を逸らした。

「……いや、それは俺たちには関係ないことだ。」

「あるわよ!」

思わず声を荒げた。

「だって、私……ヴィックのこと……」

言葉の続きを口にする前に、喉が震えて塞がってしまう。

胸の奥に、痛みと切なさが渦巻いていた。
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