皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
二人が並んでいる場面に出くわすなんて──胸がざわめいた。

「ありがとう、アンヌ。そこに置いておいて。」

「はい……」

いつもなら、必ず私の手から直接受け取ってくれたのに。

この日だけは、彼は私に触れることを避けた。

「まあ、綺麗なバラ。もしよろしければ、一本いただけるかしら?」

ナタリー姫の澄んだ声が響く。

「これは……」と迷うヴィックに代わり、私は花束から一輪を抜き取った。

「どうぞ。」

「ありがとう。」

姫は優雅に微笑み、バラの香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

その姿はまさしく王妃にふさわしい気品に満ちていた。

「あなたは、何をしているの?」

気づけば、ナタリー姫が私に視線を向けていた。

直々に声をかけられたことに戸惑いながら、心臓が強く跳ねる。

庭師にすぎない私と、完璧な姫とのあまりの差が、痛いほどに突きつけられるのだった。
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