皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
こんな気まずい空気の中でも──私は庭師として、バラを届けなければならない。

愚かな役目を選んでしまった、と胸が痛んだ。

「ヴィック。今日もバラを持って来ました。」

「ああ、アンヌ」

その日は、彼の様子がいつもと違っていた。

花束を抱えた私を、いきなり強く抱きしめてきたのだ。

「ヴィック……?」

「今日は、君に大事な話があるんだ。」

心臓が跳ねる。

──きっと、この前の続き。

ナタリー姫に会った結果、正式に婚約者に決めたと私に告げるのだろう。

「……うん。」

力なく返事をした私を、ヴィックはそっと放した。

そして次の瞬間、私の目の前に膝をついた。

驚きに息を呑む。

皇帝が、ひとりの庭師である私に──頭を垂れようとしている。

その真剣な眼差しに、胸が熱く震えた。

想像していた「悪い話」ではなく、まるで別の未来を告げようとしているようで……。
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