皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
私は目をぎゅっと瞑り、震える声で告げた。

「……ごめん。ティドとは結婚できない。」

「アンヌ……」

その声に胸が痛んだ。けれど、言わなければならない。

「だって、私……まだヴィックのことを考えている。もし彼に振られたからって、代わりにティドの方へ行くなんて──そんなの、できないよ。」

「俺は……それでもいいんだ、アンヌ。」

掠れる声の直後、力強い腕が私を包んだ。

「ああ、アンヌ……今すぐ君をさらってしまいたい。」

抱き締める腕の熱が、彼のどうしようもない想いを伝えてくる。

胸が苦しくて、息が詰まりそうだった。

「ごめん、ティド。」

絞り出すようにそう告げると、彼はゆっくりと腕を解いた。

「……私、やっぱりヴィックのことが好きなの。」

沈黙のあと、ティドは深く息を吐いた。

「……わかった」

その一言に込められた痛みが、私の胸をさらに締めつけた。
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