皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
今では、私が台所に姿を見せると「またお母さんと話をしたいのね」と察して、他の女中さんたちは気を利かせて仕事を早めに切り上げてくれる。

「さあ、行きましょう。アンヌ。」

「うん。」

お母さんに手を引かれて、奥の小さな部屋に入る。

ベッドと鏡台、それからロッカーだけの質素な空間。

私はいつものように鏡台の椅子に腰を下ろし、母と向かい合った。

「……なんだか今日は、疲れている様子ね。」

「うん……」

お母さんの前だと、不思議と素直になれる。

張り詰めていた心の糸がほどけていくようで──。

「ねえ、お母さん。今日……ヴィックとティド、二人からプロポーズを受けたの。」

「まあ……!」

母の目が大きく見開かれる。

驚きと同時に、娘を心配する気持ちが滲み出ていて、胸がじんと熱くなった。
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