皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
「そんなことって……私にとっては、とても大きな悩みだと思うけどな。」

思わず弱音を吐くと、お母さんはそっと私の手を握った。

「アンヌ。あなたは、ヴィックのこと……どう思っているの?」

問いかけられて、胸の奥から自然に答えがこぼれる。

「……好きよ。私の初恋の人だもの。」

お母さんは穏やかに微笑んだ。

「だったら、ヴィックを信じて、その胸に飛び込んでみたら?」

あまりにも簡単に言うから、少し悔しくなるくらいだ。

でも、羨ましかった。こんなふうに真っ直ぐ答えを出せる母が。

「アンヌ。この世はね、ご縁が大切だって言うけれど……もっと大事なものがあるのよ。」

「なあに? それは」

「相手を愛する気持ちだよ。」

お母さんの目は、どこまでも優しかった。

「ヴィックは身分の違いを知った上で、あなたにプロポーズした。それは愛の証よ。アンヌも、身分の違いを気にして苦しんでいるのは、彼を本気で愛しているから。お互い愛し合っている──それって、奇跡みたいに素晴らしいことだと思わない?」

その言葉に、胸の奥の重石が少しずつ解けていくのを感じた。
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