皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
結局、アリスティドは近くを通りかかった大人に助けられた。

びしょ濡れになった二人を見て、その大人が真っ先に心配したのはヴィクトルだけ。

アリスティドは後回しにされ、その光景が胸に刺さった。

なんとかその大人をなだめて帰ってもらったものの、私もヴィクトルも、アリスティドのことが気になって仕方なかった。

「ティド。どうしてさっき、俺の手に捕まらなかったんだ?」

濡れた髪をかき上げながら、ヴィクトルが問いかける。

「別に……。ヴィックに捕まらなくても助かると思ったからだ。」

ぶっきらぼうに答え、濡れたシャツを脱ぎ捨てるアリスティド。

その態度はどこかよそよそしく、何かを誤魔化しているように見えた。

「実際は違っていただろ。」

ヴィクトルの声に、アリスティドは短く「そうだな」と返すだけ。視線を合わせようともしない。

「何だよ。最近の態度も前と違うし……俺、何かしたか?」

問いかける声に、アリスティドは一瞬だけ沈黙した。

「……何もしてない。ただ──」

「ただ?」

胸を締めつけるような空気が、三人の間に広がっていった。
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