皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
「大事な場面で申し訳ありませんが、皇帝陛下。母上様がお呼びです。」

「こんな時に?」

「こんな時だからこそです。」

短い応酬のあと、ヴィックとイーヴはしばし無言で視線を交わした。

やがてヴィックが小さく息を吐く。

「……わかった。アンヌ、すぐ戻る。そこを離れないで。」

「うん。」

彼の背中が扉の向こうへ消えていく。

残されたのは、私とイーヴだけ。

──気まずい。

沈黙が重くのしかかる。

やがてイーヴは、冷たい笑みを浮かべた。

「アンヌ。よくぞ、断ってくれました。」

「……はい。」

やっぱり。

私の言葉も、涙も、全部見られていたのだ。

胸の奥がざわつき、逃げ場のない思いに締めつけられた。
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