皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
しばらく私とヴィックが見つめ合っていたせいか、イーヴがわざとらしく咳払いをした。

「皇帝陛下。いくら同じ階に住んでいるとはいえ……まだ手を出してはいけませんよ。」

「なっ……当たり前だろ!」

顔を真っ赤にするヴィック。

私もつられて頬が熱くなり、二人で思わず笑い合ってしまった。

──こんな瞬間が、ずっと続けばいいのに。

だが、イーヴの冷たい声がその甘さを切り裂いた。

「では、アンヌ嬢は広間へ。早速ダンスの練習をしていただきます。」

「ダンス……?」

あまりにも縁遠い言葉に、思わず呟いてしまう。

これまでの人生で一度も考えたことのない、華やかな響き。

「さあ、行きましょう、アンヌ。」

カトリーヌさんは胸を張り、やる気に満ちていた。

「じゃあね、ヴィック。」

振り返った私に、彼は優しい笑みを返してくれる。

その笑顔がある限り、どんな未知の試練も乗り越えられる気がした。
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