皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
私はヴィックに手を振り、胸を高鳴らせながら階段を降りた。

その先に立っていたのは──優雅な身なりの紳士だった。

「フェルナンド先生です。先生、こちらがアンヌ・マリー嬢です。」

イーヴの紹介に、彼はにこやかに頭を下げる。

「お初にお目にかかります、アンヌ・マリー嬢。」

そう言って私の手をとり、軽く口づけを落とした。

「は、初めまして……」

慌ててちょこんと頭を下げる。

その瞬間、イーヴの鋭い声が飛んだ。

「アンヌ。挨拶はドレスの裾を軽く持ち上げ、足を一歩引いて礼をするものです。」

私の背筋がこわばる。

そんな作法──知っているはずがない。

庭師として生きてきた私にとって、こんなのは縁遠い世界だった。

「まったく……挨拶から教えた方がよかったですね。」

冷たい目に射抜かれ、思わず唇を噛みしめる。

──どうして。

これから妃になるのに、どうして最初から“できない”と決めつけられるの?

不安と悔しさが混じり、私は少し不機嫌な顔をしてしまった。
< 78 / 100 >

この作品をシェア

pagetop