皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
「アンヌ・マリー嬢。そんな顔をしてはダメです。」

フェルナンド先生は、にこやかに言った。

言われた通り、私はぎこちなく笑みを浮かべる。

──そう、笑顔のままで。

お妃になるためなら、この表情すら練習の一部なのだ。

「では、そのままレッスンに入りましょう。足はこう、ステップを。」

「はい……」

慣れない靴で踏み出すと、裾に足が絡まりそうになる。

先生がすかさず支えてくれた。

「腕はこちらへ。」

「わっ……!」

ぐいっと持ち上げられる腕に、体のバランスを崩しそうになる。

それでも必死に真似をし、何度も繰り返す。

初めはつまずいてばかり。

けれど、毎日少しずつ繰り返すうちに、ぎこちない動きが形になっていく。

──そして、一か月。

汗を流し、転びそうになりながらも、私はステップを覚えた。

胸の中に芽生えるのは、小さな誇りと……まだ消えない不安。

ヴィックの隣に立つその日まで、私はもっと磨かれなければならない。
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