皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
「アンヌ。もう、あいつに必要以上に近づくな。」

その言葉に、私は思わず目を大きく見開いた。

好きで仕方のなかったヴィクトルのことを、なぜ──。

「どうして? ヴィックが何かしたの?」

「何もしていない。けれど……あいつは俺たちとは違う身分なんだ。」

アリスティドの視線は遠く、さきほどの言葉が脳裏に蘇る。

“ヴィックに何かあったら、俺たちの命が無くなる”──。

「それって……さっき言ったことと関係しているの?」

「ああ。」

苦々しげに前髪を掴み、アリスティドは走り去る馬車を見つめる。

「ヴィクトルは……皇帝の息子だ。この国の次の皇帝になる人間なんだ。」

その言葉に、心の奥が大きく揺れた。

幼い日から憧れていた笑顔が、一瞬で遠ざかっていく。

届くはずがない。手を伸ばしても、決して。

「……私たちとは、身分が違うってこと?」

「そうだ。」

短い返答が胸を突き刺し、私の初恋は、静かに崩れ去った。
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