皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
足音が二つ。

そのうちのひとつは、私が恋い慕う声の主だった。

「皇帝陛下。ここにはもう、人がいないように思えます。」

イーヴの低い声が、冷たく響く。

「しかし……アンヌがいなくなった以上、ここしか残っていない!」

必死なヴィックの声に、胸が震えた。

──私のために、探してくれていたんだ。

「もしかしたら、妃教育に限界を感じて、家に戻ったのかもしれません。」

「いや、それは確かめさせた。家には帰っていない。この屋敷のどこかにいるはずだ!」

ああ、ヴィック……。

そんなに一生懸命、私を探してくれているなんて。

私は扉に向かって必死に手を伸ばした。

けれど、衰弱した体は動かず、わずかに震える指先すら床に沈み込む。

「ここだよ……ヴィック……」

声にならない声が喉に詰まり、涙だけが頬を伝う。

どうすれば──どうすれば、この想いが彼に届くの?
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