皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
ヴィックの献身的な看病のおかげで、私は五日ほどでようやく床から起き上がれるようになった。

「やっと立てるようになったわ。」

「無理してはいけないよ、アンヌ。」

穏やかに制する声が胸に染みる。

こんな時でも、彼は変わらず優しかった。

だが私は、ただ守られるだけでいるのが怖かった。

次に何か起これば、また無力なまま誰かの手を煩わせる。――それだけは嫌だった。

そこで私は一つの作戦を実行する。

「カトリーヌさん。知り合いに護身術を教えてくれる人、誰かいない?」

唐突な問いに彼女は目を丸くした。

「ええ、いますけど……なぜ?」

「こんな事があったばかりだし、自分の身は自分で守りたいの。あと、このことイーヴさんには黙っていてね。知られると“淑女がどうの”と言い出すでしょうから。」

少しの沈黙ののち、カトリーヌさんは柔らかく頷いた。

「分かりました。そういう事なら、お力になりましょう。」

その返事に胸が熱くなる。私は仲間を得た。

これで怯えるだけの自分ではなく、イーヴさんにさえ立ち向かえる強さを手に入れられるかもしれない――そう信じた。
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