皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません
もう少し遅れていたら、確実に殺されていた。

そして、月明かりに浮かび上がった顔を見て、私は息を呑む。――イーヴさん。

「運のいい娘だな。」

低く嗤いながら、彼は突き刺さった剣を引き抜いた。

布団から血のように赤い布切れが舞う。

「牢で餓死していれば、痛みも知らずに済んだものを……」

足がすくみ、体が震える。

信じたくない。けれど、その狂気を帯びた眼差しは、紛れもなく現実だった。

「さあ、アンヌ!この国のために死んでくれ!」

怒号とともに剣を振りかぶる。

「いやっ!」

咄嗟に手にした枕を投げつけた。

けれど、あまりに無力だった。

布は剣で簡単に切り裂かれ、羽毛が散る。

「大人しくしろ!」

イーヴさんの声が雷のように響く。

その瞳は人のものとは思えないほど冷たく、凶悪で、私を貫いた。

息が詰まり、足が後ずさる。逃げ場はない。

この部屋で、私は今まさに命を奪われようとしているのだ。
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