もう分別のある 大人ですから
金曜の仕事終わり、夏希は久しぶりに冬馬の家へ向かった。
反対側のホームに赤澤の姿を見つけたけれど、スマホを見つめたまま気づかないふりをした。

冬馬の家の近くで一緒に晩ご飯を食べた。
向かいに座る冬馬を見ながら、夏希はこの人とあと何回、こうして同じ時間を過ごすのだろうと考えていた。
ご飯を食べて、身体を重ねて、デートして
――その先に別れがあることだけが、頭から離れない。

部屋に戻ると、冬馬はすぐに夏希に手を伸ばした。
拒む理由は見つからず、そのまま受け入れる。

久しぶりだったせいか、冬馬の動きはいつもより荒く、切羽詰まっていた。
逃がさないと言わんばかりに強く引き寄せられ、息が詰まる。

激しさに戸惑うはずなのに、夏希は身体を預けていた。
自分を求められているという実感が、妙に心地よかった。

理性よりも感覚が先に反応して、考える余裕がなくなる。
呼吸は乱れ、頭の中は白くなっていった。

冬馬の熱に煽られるように、夏希自身も次第に余裕を失っていく。
抑えきれずにしがみついてしまう自分に、少し驚きながら。
普段見せない夏希の姿に冬馬はひどく興奮して、理性は存在しなかった。

夏希はこの日ばかりは、どうされてもいいと思ってしまった。
別れを考えていたことも、迷いも、不安も、すべてが遠のいていく。

お互い、ただ衝動のままに、何度も身体を重ね、指を絡め、抱きしめ合いながら果てた。

やがて力尽きたように、二人は並んで横になった。
天井を見つめながら、荒い息だけが部屋に残る。

「あいつとは、もう会ってない?」

冬馬の低い声に、夏希は短く答えた。

「うん、彼氏いるって言った」

それを聞くと、冬馬は何も言わずに夏希を抱き寄せ、そのまま眠りに落ちた。

夏希は腕の中で目を閉じながら、静かに眠りについた。

二人の間にあったのは、心のつながりではなく、
確かめ合うように重ねられる身体だけの関係だった。
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