もう分別のある 大人ですから
それから、夏希と赤澤は職場ですれ違っても、挨拶を交わすだけの関係になった。
それ以上でも、それ以下でもない距離。
何もなかったみたいに振る舞えるのは、大人になった証拠なのか、それとも逃げなのか、自分でも分からない。
昼休み、白石と連れ立ってランチに出た。
「私ね、紫村さんとご飯行ってきた」
白石はフォークを持ったまま、少し得意げに言った。
夏希は頷きながら話を聞く。
「やっぱ年上だからかな、大人の余裕っていうの?あるんだよね。でもさ、たぶん女慣れしてるタイプ」
「あの見た目で?」
「意外でしょ。私はかっこいいと思うけどな。性格いいし、さらっと女の子扱いしてくれるとこもポイント高い」
白石は楽しそうに笑う。
「でさ、『よかったらまたご飯行こ』って誘われちゃった」
念願の彼氏候補を前にした白石の目は、逃すまいとする強さを帯びていた。
「それは、よかったじゃん」
夏希の声は、自分でも驚くくらい平坦だった。
「あ、そうそう。赤澤くんね、同じ営業部の子から狙われてるらしいよ」
一瞬、心臓を小さく打たれたような感覚があった。
でも、それだけだった。
「……そうなんだ」
「ぶっちゃけ、どんな感じ?」
「どんなって言われても。彼氏いるし」
「まだ別れてなかったんだ」
「すぐにはね。二年だし、情もあるし。終わらせるならちゃんとしたいから、タイミング見てる」
白石は少し意外そうに眉を上げた。
「赤澤くん、それ知ってるの?」
「彼氏いるってことは言ったよ」
「別れるかもってことは?」
「言ってない。関係ないし」
白石は少し考えるように口を閉じてから、肩をすくめた。
「青葉は、それでいいの?」
「いいもなにも……別れたから次、っていう考え方、あんまり好きじゃないの」
「えー、もったいない」
白石はそう言って笑ったけれど、
夏希はその言葉に返す言葉を持たなかった。
もったいないのは、
タイミングなのか、気持ちなのか、
それとも――自分自身なのか。
それ以上でも、それ以下でもない距離。
何もなかったみたいに振る舞えるのは、大人になった証拠なのか、それとも逃げなのか、自分でも分からない。
昼休み、白石と連れ立ってランチに出た。
「私ね、紫村さんとご飯行ってきた」
白石はフォークを持ったまま、少し得意げに言った。
夏希は頷きながら話を聞く。
「やっぱ年上だからかな、大人の余裕っていうの?あるんだよね。でもさ、たぶん女慣れしてるタイプ」
「あの見た目で?」
「意外でしょ。私はかっこいいと思うけどな。性格いいし、さらっと女の子扱いしてくれるとこもポイント高い」
白石は楽しそうに笑う。
「でさ、『よかったらまたご飯行こ』って誘われちゃった」
念願の彼氏候補を前にした白石の目は、逃すまいとする強さを帯びていた。
「それは、よかったじゃん」
夏希の声は、自分でも驚くくらい平坦だった。
「あ、そうそう。赤澤くんね、同じ営業部の子から狙われてるらしいよ」
一瞬、心臓を小さく打たれたような感覚があった。
でも、それだけだった。
「……そうなんだ」
「ぶっちゃけ、どんな感じ?」
「どんなって言われても。彼氏いるし」
「まだ別れてなかったんだ」
「すぐにはね。二年だし、情もあるし。終わらせるならちゃんとしたいから、タイミング見てる」
白石は少し意外そうに眉を上げた。
「赤澤くん、それ知ってるの?」
「彼氏いるってことは言ったよ」
「別れるかもってことは?」
「言ってない。関係ないし」
白石は少し考えるように口を閉じてから、肩をすくめた。
「青葉は、それでいいの?」
「いいもなにも……別れたから次、っていう考え方、あんまり好きじゃないの」
「えー、もったいない」
白石はそう言って笑ったけれど、
夏希はその言葉に返す言葉を持たなかった。
もったいないのは、
タイミングなのか、気持ちなのか、
それとも――自分自身なのか。