もう分別のある 大人ですから
次の日の昼休み、夏希は白石に誘われて、近くの定食屋に入った。

「そういえばさ、昨日の中途の人、受付してたよね?」

箸を持つ前から、白石はもう本題に入っている。

「今日、私を誘ったのってその話するため?」

「まあ、それもあるけど。普通におしゃべりしたかったの」

「はいはい」

要注意人物だとは思っているけれど、白石は裏表がない分、遠慮なく言い返せる相手でもある。

「私さ、結局顔見れなかったんだよね。今日もタイミング逃したし。やっぱイケメン?どんな感じ?」

少し迷ってから、夏希は答えた。

「その人ね、中学の同級生だったんだよ」

あとから広まる方が面倒だと思い、さらっと言って白米を口に運ぶ。

「えっ!?そうなの?それ、先に言ってよ!」

「なんで。別に大したことじゃないでしょ」

白石の目が、一気に輝いた。

「どれくらいぶり?十年とか?」

「それくらいかな。成人式では一回見かけたけど」

「へえ〜。じゃあさ、今度紹介してよ」

「無理」

即答だった。

「えー、いいじゃん。それかさ、営業部と合コンでも組んでよ」

「そんなに仲良くないし。白石なら自分でどうにかできるでしょ?」

「できてないから今ひとりなの〜」

大げさに肩を落とす白石を横目に、夏希は黙って味噌汁を飲んだ。

赤澤に彼女がいるのかどうかは、知らない。
でも、誰かに紹介する気にはなれなかった。

理由を聞かれても、うまく説明できない。
ただ、白石には近づけたくない――それだけは、はっきりしていた。
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