Secret love.
式場の前に立つと父が扉の前に待機している。

なぜか私と同じくらい父も緊張していて、手と足を同時に出してロボット進行してしまいそうなほど体が固まっていた。


「…ちょっと待って。私以上に緊張しないでお父さん。」

「こんな人前に出ることないから…。うまく歩けるかな…。」

「私の心配して!慣れないドレスで歩くんだからね!私!」

「そうだよな…。情けない…。」


どうして私が父のフォローをしなければならないのか。呆れるけれど、段々と笑えてきて緊張が少しずつ解れていく。

私が思わず笑うと、父も私の顔を見た後少し笑ってようやくそこで「綺麗になったな。」と言葉を掛けてくれた。


「…お父さんとお母さんの娘ですから。」

「そうだな。母さんも綺麗だったし、当然か。」

「ここで惚気?」


そんな会話をしているうちに少しずつリラックスしてきて、父の腕を優しく掴むと壮大な音楽が中から聞こえてきた。

昔はよく父は私がそういう相手もいないのに「バージンロードを歩いて優花を送り出すなんて考えたくもない!」と何故か騒いでいた。その度に母が呆れていたのだけど、本当にそんな時が来るなんて想像もしていなかった。


「…歩くんなら大丈夫だな。」


扉が開く前に父がそんなことを呟いていて顔を向けると、まっすぐ前を向いていてどんな表情で言っていたのかはわからない。

私もその言葉に「うん」とだけ短く返事をして前を向く。
< 176 / 181 >

この作品をシェア

pagetop