Secret love.
定時が来る数分前、営業部に書類を届けに向かうと、いつものデスクに及川くんが居た。私には気付いていなくて、真剣な表情で仕事をしている。

その姿を盗み見ながら別の人に書類を渡し、用事を済ませるとそこで及川くんが気付いてこちらに寄ってくる。


「川﨑さん、営業部に来てるの珍しいね。」

「…ちょっと書類渡しに来たので、もう戻ります。」

「戻るついでにちょっと付き合ってよ。」

「は?」


そう言いながら軽く背中を押されてオフィスの外に連れ出される。及川くんが余計な接触をしないというルールを作ったくせに全くルールを守らないのはいつも及川くんの方。

少し離れた自動販売機の方まで行くと、そこで飲み物を選んでいる。


「…何で、連れてきたの。」

「良いじゃん。休憩。」

「この時間に休憩って…、今日は残業ってこと?」

「そ。だから、今日はご飯作らなくて良いから。」

「そう言う話はメッセージでするんじゃなかったの。」

「2人だし気にすんなって。」


そう言いながら軽く頭を撫でられても、その手を払えない。

みんなの前では爽やか王子様風の顔をして話し掛けて来るのに、2人きりだと砕けた話し方になっているのを見ているのも、何気に好きなポイントだったりする。
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