Secret love.
「早く可愛い優花に会いたいんだけど、まだだめ?」

「…会社で交際は隠すのに、こういうことはしてくるんだね。」

「怒ってんの?」

「怒ってる。何考えてるか分からない。」


及川くんが隠したいって言うから、及川くんの決めたルールを私は忠実に守っているのに、いつも破っているのは及川くんの方だ。こんなことするなら、もう堂々と公表してくれたらいいのに、そうはしてくれない。そして、公表しない理由も私は知らない。

私が顔を逸らすと、及川くんは軽く私の頬に触れてくる。怒っていると伝えているのに、こんなに優しく触れてくるところ、凄くずるいと思う。


「優花の事しか考えてないよ。」

「そんな言葉で誤魔化されるちょろい女だと思う?」

「誤魔化してないって。」


及川くんを睨みつけると、優しく微笑んでいて頬に触れていた手を髪に移してそのまま少し掬うと髪に口付けてくる。


「ずるい、むかつく。」

「それ彼氏に掛ける言葉?」


そう言って笑うとゆっくりと顔を近付けて唇を重ね合わせる。怒っていると言いながらこういう時、嫌じゃないと思ってしまって突き放せない自分に腹が立つ。

離れてから見つめ合うと「早めに頑張って帰るから、先家で待ってて」と、頭を撫でてこの場を先に離れる。

結局聞きたい事は聞けないまま、またはぐらかされた様な気がする。軽く溜息を吐いて、顔の熱を冷ましてから物置を出た。
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